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エモリー大学の研究チームが、Google Cloud を使って ICU 患者の敗血症を予測

エモリー大学では、臨床データと機械学習、Google Cloud のスケーラブルなインフラストラクチャを組み合わせた敗血症予測エンジンを使ってリアルタイムでデータを分析し、危険な状態の患者に対してより適切な処置を行うとともに、医療費の抑制も実現することを目指しています。

敗血症とは、感染症に対する自己免疫反応による疾患です。米国の病院において最も致死率が高く治療費が高額な病気のひとつであり、毎年約 75 万人の米国人が罹患しています。早期発見と予防により救命率を高め治療費やリソースを節減できますが、いまだ敗血症を迅速に診断する確実な方法はありません。エモリー大学医学部生物医学情報学科の Shamim Nemati 博士と Ashish Sharma 博士は、革新的な手法でこの難題に挑戦しています。Nemati 博士は、エモリー大学病院の集中治療室から患者 3 万人の匿名化された電子カルテを収集して AI エンジンを作成し、65 種類の関連数値を分析したのです。これには、バイタル サイン、患者の人口統計学的データ、検査結果などが含まれます。5 分ごとに受信する患者データを継続して監視することで、敗血症予測エンジンはリアルタイムで複合的なスコアを算出します。これによって、敗血症の兆候を予測し、発見した結果をダッシュボードに表示して、臨床医が診断できるようにします。早期発見が鍵となる敗血症の、抗生物質による治療が最も効果的な段階で、臨床医がスコアと根拠を確認できるのです。

"TensorFlow ベースの敗血症予測アルゴリズムをアプリケーションに実装して Google App Engine で実行することによって、導入とスケールアップのためのインフラストラクチャの必要がなくなり、その分アルゴリズムの改善に集中することができました。"

Shamim Nemati, 生物医学情報学科、助教授, エモリー大学

救命救急のソリューション

この予測エンジンは極めて重要な 3 つの要素でできています。受信・格納されるデータセット、データを分析する AI アルゴリズム、臨床医のための管理画面(ダッシュボード)です。データのインプットと格納は特に複雑です。患者ごとの血圧や呼吸数などの何十メガバイトもの高解像度データは、タイムスタンプが付けられ、プライバシーを保って安全に保存され、重要な場面で迅速に結果が得られるよう瞬時に処理されます。そして、臨床医が一見しただけでわかりやすいようにデザインされたダッシュボードに、敗血症リスクスコアが表示されます。敗血症の恐れがあるしきい値に達した患者がいると警告システムで臨床医に通知され、素早い対応ができるしくみになっています。

Sharma 博士は、Google Cloud(Google Cloud)のツールと、TensorFlow やコンテナ化されたマイクロサービスなどのオープンソース ツールを使って互いに連携させ、Google Cloud 上にこの予測エンジンを構築しました。その結果、データ入力、予測分析、フロント エンド インターフェースへの表示という一連の処理を、スムーズにリアルタイムで実行できるようになっています。さらに Nemati 博士と Sharma 博士は、迅速な医療情報相互運用のためのリソース(FHIR)データベースを Google Cloud 上に構築することによって、信頼性があり安全でプライベート プラットフォームにおける機関をまたいだ予測エンジンの拡張と相互運用を実現しています。このプラットフォームでは、エモリー大学病院ですでに利用されているモニタリング用ウェアラブル端末など、クラウド技術を使った他のプロジェクトも運用されています。

Google Cloud でアプリケーションを拡張

これまでに Nemati 博士と Sharma 博士率いる研究チームは、Emory eICU Center と提携し、ローカル サーバーのデータを使って予測エンジンを検証。異なるタイムフレームでテストを行い、発症 4~6 時間前に 85% というすばらしい精度で敗血症を予測するという成果を上げています。さらに、研究チームはプログラムを他の場所でも使えるようにするため App Engine に注目しました。「TensorFlow ベースの敗血症予測アルゴリズムをアプリケーションに実装して Google App Engine で実行することによって、導入とスケールアップのためのインフラストラクチャの必要がなくなり、その分アルゴリズムの改善に集中することができました」と Nemati 博士は語ります。

研究チームはこの予測エンジンが機能することがわかったので、より多くの患者と臨床医を対象にした試験を計画しています。また、パフォーマンスと拡張性を高めるために、Google Cloud Machine Learning Engine と TPU にアルゴリズムを移植中です。患者データの流出のリスクを最小限に抑えるため、徹底した暗号化も行っています。Google Cloud 上で広範囲に及ぶテストを行うことで、新たな疑問に対する回答も得られます。それはたとえば、正確な予測や治療の最適化のために理想的なタイムフレームはどのようなものか、この予測エンジンは医師が患者を救うために役立つのか、病院ごとに業務フローや文化が異なるなかでリスクスコアは治療にどのような影響を与えるのか、といったものです。

結局、最も重要なのは、集中治療室の実際の患者に対する治療の成果を向上させることだと Sharma 博士は考えています。「このアルゴリズムが優れているのは、医師が患者に対して適切な処置を行うことができるベストなタイミングで情報が提供される点です。また、このアルゴリズムではディープラーニングのブラックボックス化が解消されており、医師は、患者が危険な状態にあるという結果が出た理由を確認できます。」Nemati 博士も同意見です。「2017 年に発行された New England Journal of Medicine(NEJM)誌に、敗血症の治療が 1 時間遅れるごとに、死亡率が 4% 上がるという記事が掲載されていました。では、もしこの方法で敗血症を検知し、間に合うように患者に抗生物質を投与できたとしたら、何パーセントの命を救うことができるのでしょうか。まだそ答えはわかりませんが、現在エモリー大学でその試験を行っており、一般化できるかどうかをどこかで発表する必要があるでしょう。」

"このアルゴリズムが優れているのは、医師が患者に対して適切な処置を行うことができるベストなタイミングで情報が提供される点です。"

Ashish Sharma, 生物医学情報学科、助教授, エモリー大学

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